紙と文字の出現と和歌・手紙
奈良時代に中国から紙と漢字が仏教と共にわが国に伝来してきたといわれています。従って、紙と文字は1300年を超える長い歴史をもちます。
紙に書かれた文字は中国から伝わった仏典でした。そこで日本では仏典に書かれている漢字の書写がなされました。
その後、平安時代に宮中の女性の手によりかな文字が誕生。平安時代の文学は主に女性の手によりますが、著名なところでは世界にほこる“源氏物語”があります。ちなみに日記がはやったのもこの時代です。
手紙の始まりは恋文、すなわち 相聞歌です。万葉、古今、新古今集で多くの和歌が詠われています。
さらに江戸時代を経て、武家社会では命令伝達に奉書がつかわれました。そして、飛脚による書面の配達も始まります。これらは絵画にみられるとおりです。江戸時代では侍の手紙として簡潔な文章として紹介されている “一筆啓上、おせん泣かすなー”は皆さんご存知でしょう。
明治時代に入って郵便制度が施行されます。 葉書や封書の誕生です。今日まで続いています。 私どもの生活の中で全国一律に葉書と封書は同価格で相手に届き、便利な意志 伝達、情報伝達手段のひとつとなっています。
文字は漢字、かな、ローマ字、カタカナの4種を巧みに使用していますが、われわれの心を形に変えて表現しているのが手紙といえましょう。
古い手紙はどこにあるの? 博物館にある手紙
歴史上の人物豊臣秀吉や徳川家康の文書を博物館などで今日見ることができます。又、明治時代以降の人物、澁澤栄一を初めとする経営者、大熊重信など教育者の文書、光太郎や千恵子のよう芸術家の書簡集も読むことができます。現代では、第二次世界大戦のおりの特攻隊隊員の若き少年たちから母への手紙、原爆の地での母から子への手紙なども記念館で読むことができます。そして、これらにより、手紙がその人物の気持ちを伝える目的で交わされていることや、戦いなどの歴史を変えるドラマティックなシーンになっていることを知ることができます。
印刷物になっている手紙
江戸時代に鹿児島の種子島から長崎へとポルトガル人やオランダ人が渡来。わが国の欧州との交流が始まります。南蛮の学問の学びと同時に薩摩藩主島津斉彬は江戸時代に印刷職人を江戸から招聘し、活版印刷機を製造させ、出版物を発行しました。
その後、明治、大正、昭和時代の手紙類は印刷物として読むことができます。 時によりその書簡や手紙は映画やTVのドラマになって私どもに視覚に訴えます。 手紙は日常における個々の人々の愛にまつわる時間やその時代の環境を伝えています。 昭和30年代、「愛と死をみつめて」のマコとミコの書簡集は出版物となりその後ドラマとなりましたがこれは手紙による交換から生まれたものです。
直筆の手紙は21世紀まで残っている
明治時代に多くの若者が欧州、米国に学びました。海外に留学中の子弟から家族への手紙もあります。諸外国との交流で外地にあって恋人同士、夫婦の手紙として残っているものも多数あります。最近ではなんとダヴィンチの直筆手紙を私どもは21世紀になって見ることができました。
先に述べましたが、直筆の手紙はその人のその時代のその瞬間を私どもにイキイキと伝えます。身近では、故人となった祖父母の手紙などもそうです。倉庫の文箱に残っている手紙はその家族の一員にとって、何にも変えがたい今はない方々の息吹を感じる一家の宝となることでしょう。